安倍人気って、いったい何だろう?――このリアリティのなさ
アベシンゾー氏が、「さわやか」で「ハンサム」で「国民的人気」があるなんて、自分の周囲で聞いたことがないという話は、いろいろな人がいろいろなところで言っています。
私も、どちらかといえば暑苦しさを感じさせ、子供心に覚えている、「昭和の妖怪」といわれたおじいさんの顔にそっくりで、プールでも公民館でも、ご近所のおばさんたちの間でも話題に上ることはまずないのに、なぜ? といぶかしく思ってました。
新聞記者も大して変わらなかったようで、数日前の毎日夕刊の特集は、題して「ホントに『安倍人気』? 高いと言われているけれど‥‥」でした。
香山リカさんも同行した9日のJR秋葉原駅前での自民党総裁選立候補者3人の街頭演説の取材で、結局、
「人気の最大の理由が『国民的人気』があることで、『国民的人気』があることでさらに人気が高まる」という結論に達していました。
この街頭演説では、1万人(主催者の発表)の聴衆は、主役アベ氏の登場にもごく普通の拍手で応えたようです。
オー・マイ・ニュースのビデオを見る限りでは、とても1万人が拍手したようには聞こえません。
その後、候補者の登場と共に携帯電話を高く掲げて写真にとりメールで送った人たちが、演説も聴かずに次から次へとその場を立ち去ったとか。
民法からNHKまで、テレビ界あげて使う「国民的人気」という枕ことばがアベ氏の前につくようになったのは、いつ頃からでしょうか。私自身は信じられないという気持ちでしたし、周囲でも、「えっ、人気があるの? どこが?」という受け止める人ばかりでした。
アベ人気っていったい何でしょう?
もしかしたら、巷で囁かれているように、本当にねつ造?
実態のないものをあるが如くに扱い、それが既成事実となってさらに妄想が膨らんでいく、なんて考えても不思議ではありません。
仕掛けたのが誰か、どんな勢力の人たちなのかいろいろと推測されていますが、いずれにせよ、こういう情報戦略に、庶民はまったく無防備なことをあらためて痛感します。
記事に出てきた20代、30代の男女はアベ氏の政策、憲法改正・集団的自衛権の行使に賛意を示しています。
が、歴史に詳しそうな女性の方は太平洋戦争によるアジアの犠牲者数が500万人以上にものぼることを知らない。「へ~、そうなんだ。それ、多いのかな」と無邪気に言う。
20歳の男子大学生の方は、戦争ができる国なら、徴兵制がありうると考えたことがあるか、という問いに、
「それは全然なかった。でも、そうですよね、その通り。自分はイヤですよ、戦争に参加するの。だってイヤですよね」と答える。
安倍人気にリアリティを感じられなかったように、戦争のできる「普通の国」をつくろうという主張に賛成する若者たちにも、決定的なリアリティが欠けているのです。
これはかつて私自身が体験したものにも通じることでした。
国を守るのに命を捨ててもいい、といった10代の若者は、その言葉の直後に経験した腕を幾針か縫う怪我で、大騒動することになりました。
ベトナム戦争時の悲惨なありさまが世界中に巻き起こした批判・非難のうねりを怖れてか、パパ・ブッシュが実態を隠したままで遂行した湾岸戦争の映像を見た小学生は、花火みたいだね、と言っていました。
爆弾の炸裂する下でおびただしい血が流れること、それが人々の住む町も家族の生活もすべて破壊してしまうことを想像する力は、どこへ行ってしまったのでしょうか。
ハイテク戦という、生身の人間を見せないようにする装置のせいだけではありませんね。
正義の戦争を行うものにとって、相手は当然死すべきものとして1つの塊のようにみなされ、一人ひとりの生命など考慮されなくなってしまう。おまけにその「正義」には根拠がなかったとすれば、敵・味方にかかわらず払われた犠牲は、どう考えればいいのでしょうか。
さらに、日本人傭兵の戦死で垣間見えたように、イラク戦では民間の軍事請負業者に依存する割合がずいぶん高いのだとか。
そうして私たちの目に見えないところで、軍事行動がどんどん推し進められていきます。
父は20歳で徴兵されて2.26事件を経験し、敗戦時は30歳。人生の一番楽しい時期を戦争に奪われ、地獄を見ています。何度考えても、こればかりは納得いきません。
寡黙な人で、何か私に語ったわけではありません。せいぜい、60年代にテレビで流行った米国製戦争ドラマ『コンバット』を見る私に、「本当の戦争はこんなものじゃないぞ」といったぐらいです。でも、背中を見ているうちに、何かを伝えられたような気がします。
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