前門の格差産生・助長政策、後門の高金利貸金業
今更ながらに、政府・与党の業界より体質を痛感しました。
消費者金融のグレーゾーンの金利撤廃を主張してきた後藤田正純氏が内閣府政務官辞任を表明したと報道されています。
業界等の利害関係団体の意を受けてでしょう、業界を規制する法律には、やたらと抜け穴を画策したあとが透けて見えるようなものが多いですね。
問題の「グレーゾーン」も、そうしたことから生じているのでしょう。
人がお金を借りるときは、貸す方と借りる方の間で利息は好きなように決められますが、「利息制限法」で、上限が定められています。
貸金業者の貸付金利の上限は、
元本10円未満は年率20%、
元本10万円以上100万円未満は年率18%、
元本100万円以上は年率15%
ということで、これを超える利息分は無効です。
ところがこの利息制限法では、違反しても処罰されることはありません。
もうひとつ、「出資法」という法律があり、1954年にこれが施行されてから何度も上限金利が下げられてきていて、2000年6月から現在のところ、29.2%になっています。
なんと、1954年当時の上限金利は109.5%、そして2000年の引き下げ前の上限金利は40.004%だったのです。
この出資法の29.2%と利息制限法の15~20%の間がグレーゾーンといわれるものです。
出資法の違反については、罰則規定が設けられています。
そこでテレビCMなどでお馴染みの貸金業者は、このグレーゾーンの範囲内で利息を決めるわけです。
コイズミ改革の5年間で、借りたお金の返済に問題が生じて裁判所に調停を申し立てる人の数が大幅に増えています。
調停では利息制限法に基づいて返済金額の計算のやり直しが行われます。その結果、残高が大幅に減る、あるいは、とっくの昔に返済が終わって払いすぎとなることもよくあります。
この特定調停を申し立てる人が後を絶たないわけですが、それぞれの事情を抱えて右往左往し、やっと調停にたどり着いた人が圧倒的に多いそうです。
引き直し計算をして残高の減少や返済が完了していることを知らされた人は、どんなに安心することか。そして新たな返済計画を基にして、それこそ人生のやり直しを決意するのでしょう。
そこでグレーゾーン金利を無効とする最高裁判決を受けて昨年3月に開始した金融庁の貸金業懇談会で上限金利引き下げが最大の論点になってきたわけです。
ところが急な上限金利引き下げの影響を懸念する金融庁・与党の双方から「激変緩和のための移行措置」という案が出され、少額・短期に限り金利上乗せを認める特例措置を認める発言が、与謝野経済財政・金融担当相からも出されました。
業者側も金利引き下げに反対する議員側からも、利用者が不便になるとか、業界の自主的な適正化に期待すべきだとか、もっともらしい論が展開されてきました。
でもここで注意したいのは、いわゆるサラ金が利用されるのは、少額・短期の場合がほとんどだ、ということです。ですからほとんどのサラ金利用者は、法が改正されたところで益になるどころか、かえって従来よりも高い金利を課される結果になります。それも、合法的に。
これまでは利息制限法の適用を受けて残高減少や過払いとされてきたことが、最長8年間に限られている(改正法施行後3年間、グレーゾーン金利温存。その後も、少額短期の融資には28%の特例金利を5年間認める)とはいえ、現行を上まわる28%もの高い金利が法的に認められて、業者は堂々と従来以上の儲けを手にすることができるわけです。
こんなおかしな話しはないと思います。ここまで露骨にサラ金業界のための利益を計ろうとする官僚・政治家って、いったい何なの?!
また一般の人も、サラ金から借りるような人は特別な人で、自分は関係ない、と思っていないでしょうか。
ところがサラ金からでも借りなくてはやっていけない人が多いから、駅前の一等地に店舗を構えて、あれだけテレビCMを流せるくらいに利益が出ているのでしょう。
格差を作り出してそれを助長する政策をとり、お金に困った人には消費者金融がありますよ、とテレビで喧伝するに委せる。そんな政治がまかりとおるなんて、どう考えてもおかしい。そう思いませんか?
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