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うまいことやっている人が得をする

 前回のエントリーで、東大大学院の神野先生が、「国民が政府に支えられていると思っていない」ため、「歳出を減らしたら増税に応じる」という、「本来あり得ない考え」が世論調査の結果に出る、と言われていることを書きました。

 「自分たちへのサービスを減らしたら金を出すという意味で、本来ありえない考えだ。税金が自分たちのために使われているのではなく「誰かがうまいことをやっているに違いない」と感じているからだろう」という先生のお話でした。

 さて、世論調査も色々ありますが、たとえば、内閣府「日本21世紀ビジョンに関する特別世論調査」でもそうした結果が出ていました。

 そこではデータに先立ち、次のようなことを謳っています。

 現在内閣府では経済諮問会議の下、「日本21世紀ビジョン」を確定しています。「日本21世紀ビジョン」は、今後四半世紀をにらみ、構造改革により実現されるこの国のかたち」を明確かつ体系的に示すことにより、国民の間の共通の認識を図るものです。

 そして、「人口減少時代を乗り切るための対策」、「国及び地方の借金返済方法」、「日本の国際競争力を強化するために重要なこと」の3つのテーマに沿って、アンケートの結果がデータとして示されています。

 このうち2つ目の「国及び地方の借金返済方法」についての結果が神野先生がいわれたことと関係してくるでしょうか。

 国及び地方の巨額の借金を将来世代へ先送りせずに返済していくための方法としては、  

  歳出削減を主として、増税も行う    29.0%       

  全て歳出削減で対応する       26.4%

  わからない                19.4%

  増税歳出削減同程度ずつ行う   17.2%

  全て増税で対応する           6.4%

 ちょっと脱線しますが、

 ここまで読んだところで、無性に腹立たしくなってきました。

 この設問内容がとても作為的になされていると思いませんか?

 前回エントリーの「小さな政府」という語を勘違いしていた多くの国民に、またここで勘違いを起こすような「増税」と「歳出削減」という語を提示してきたからです。

 もっとも、涙ぐましいくらい真面目な国民は、「増税」といったら自分たちが負担しなければならない、仕方ない、と受けとめているのかもしれませんが。

消費税の増税は格差が拡大している中で弱者の負担を重くする。むしろ、株式などの金融資産にちゃんと課税できていないことを問題にすべきだ」と、神野先生は論じておられます。

 また、「歳出削減」といっても、「うまいことやっている」人たちが困るだけで、まさか私たちの慎ましい生活まで壊されまい、まさか命までは奪われまい、と思っているのかもしれませんが……。

 まあ、本筋に戻りますと、

国民が政府に支えられていると思っていない」という逆説的な指摘が、なぜかストーンと胸に落ちて、「国民」は、「政府」が支えているものは何だと思っているのか? という疑問が頭から離れません。

 政府が支えているものとしてすぐに頭に浮かぶのは、つまり「うまいことやっている人たち」と思うのは、やはり一番に国会議員の諸先生方、官僚の面々。いわば、政・官・財の三角形の結びつきの中で甘い汁を吸っている人たち、エトセトラ。

 最近はここに、外資とかドルとか米軍とか、アメリカ絡みのものが、とみに話題に上るようになりました。

 そして、いつかとくらさんがいっていた、「知った人だけが得する」社会だから、うまいことやっている人たちとは、「知っている人」なんでしょうね。

 でも、たとえ今、知っている人でも、いつ何時、立場が逆転するか分かりませんね。自己責任を求められても、いつまでそれに応えることができるかも、分かりません。

 それに、「B層」とかなんとか言って、国民に十分知らせてこなかった、少なくとも知らせようと努力しなかった政府の責任はどうなるのでしょうか。

 そういえば、小泉路線に異を唱える谷垣氏も、ひたすら消費税を10%にまで上げる話しばかりで、それ以外の税のあり方については何も言いませんね。少なくとも、メディアを介した話しでは、消費税以外の話しは聞こえてきません。

 累進課税の精神から所得税・住民税の税率を見直すことのみでなく、金融資産への課税法人税等々についても、考えることがたくさんあるのではないでしょうか。

 なお、法人税率の推移についてはやはり財務省のサイトに掲載されていて、昭和の終わり頃から基本税率が下がっていき、それが特に平成10・11年に著しく、グラフに載っている限り、過去最低であることが分かります

 平成元年に消費税の導入がありましたが、それと法人税率の下降が重なります。

 ひたすら痛みに耐えてきた国民に対する政府の支えは、ますます不確かなものになっていきそうです。

 増税も歳出削減も、このまま白紙委任するより方法はないのでしょうか。

 


 

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コメント

増税ありきでなく,天下りを減らす。(現在は独立行政法人になっていて更に不透明度が増しているようですが)庶民からみて税金の無駄遣いをやめて,それでもダメなら次ぎに考えようということだと思いますが,誰も天下りに本気で取り組んでいるように見えません。
庶民的にはそこがネックにも見えますが。
消費税を増税し福祉目的税といってもよく分からない特別会計とか手をつけるところはあるようですけどね。
確かに複雑すぎて一般庶民には国家規模の財政がどうなっているのよく分からないのも問題ですよね。

投稿: なかまた | 2006年7月30日 (日) 12時34分

とむ丸さん、お久しぶりです。

>ここまで読んだところで、無性に腹立たしくなってきました。
>この設問内容がとても作為的になされていると思いませんか?

全くその通りです。

憲法「改正」。教育基本法「改正」。規制緩和。自由化。増税。歳出削減。郵政「民営化」。「改革」。

これらすべてにあてはまりますね。マスメディアも政党も、万人の前で中身をはっきりとさせないまま賛成か反対かを選ばせる。(そうでない世論調査や質問項目もいくらかはあることは承知してますが。)

いやもう本当に、あまりの論理の欠如と不毛さに腹が立って憤死しそうです。私が死んだら、こんなエントリーをあげたとむ丸さんのせいですよ。(爆)

このエントリーに即して言うなら、何が無駄遣いで何がそうでないのか、それを一つ一つ検証することから話が始まりますよね。たとえば、今削減されている医療、福祉関係のことは断じて無駄遣いではないのに。

投稿: 村野瀬玲奈 | 2006年7月30日 (日) 13時18分

おはようございます、村野瀬さん。
 お願いですから、憤死だけはしないでください。
でも、憤死しそうな実態が目白押し。村野瀬さんが憤死する前に、私の方が憤死しそう……(爆)。

なかまたさん、おはようございます。
 医療費、福祉関係費などは国民にとっては必要なものですよね。でも、酷政に携わる人たちにとっては無駄遣いになるのでしょうか。
 そのうえ、税率の推移を見ていたら、もっとおかしなことに気づきました。
 やはりこれまで政権が行ってきたことは、「格差推進政策」だと痛感します。

投稿: とむ丸 | 2006年7月31日 (月) 10時13分

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