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イスラエル建国と秘密条約 その1

 今日の毎日新聞では、いつになくイスラエルとレバノンの問題が大きく扱われています。

 また先日の首相のイスラエル訪問で、少なくとも私は、否が応でも中東問題に目を向けざるをえませんでした。

 そんな意味では、あの脳天気ソーリのお陰と、感謝してもいいかな?

 さて中東に関してですが、私の知識は本当に乏しいものです。かろうじて、一応、主要国の地理的位置を知っているだけまし、といったところでしょうか。

 イスラエル、パレスチナ、レバノン、シリア、よく話題に出るヨルダン川……バルフォア宣言、といった言葉が頭をかすめます。

私の頭の中では、このバルフォア宣言イスラエル建国が結び付いていますが、それ以上の知識はありません。いったい、どうなっているの?

手元にある小学館のニッポニカでは、次のような説明がされていました。

Balfour Declaration
1917年11月2日、イギリス外相バルフォアが、第一次世界大戦に際してユダヤ人の支援を取り付けるため、戦後パレスチナにユダヤ人の国家を建設することに同意した宣言。これはユダヤ系イギリス人の銀行家でシオニスト連盟会長であるロスチャイルド卿にあてた書簡のなかで表明された。しかしこの宣言は、アラブ人に戦後の独立国家建設を約束したフサイン‐マクマホン協定(1915)、イギリス、フランス、ロシアの間で中東のトルコ領分割を取り決めたサイクス‐ピコ協定(1916)のいずれとも矛盾するものであった。同宣言に対しアメリカはただちに、18年にはフランス、イタリアも支持を表明した。

 これについてはこちらに記事に関連記事も含めて詳しく載っています。その記事から引用させていただきます。

         

親愛なるロスチャイルド卿

         

陛下の政府に代わり、ユダヤ人のシオニスト運動に次のような賛意を示す宣言をするとともに、あなたにそれを伝えることに深く欣快の意を表します。また本件は閣議に報告され承認を得ています。

         

陛 下の政府はユダヤの人々のためパレスチナに国民的地区を樹立することを好意的にみなします。そしてその目的の達成のため最大限の努力を払うものとします。 ただパレスチナに住む非ユダヤ系の人々の公民権と宗教的権利を侵害するものではなく、また他の国に居住するユダヤ人が享受している諸権利及び政治的地位を 排斥するものではありません。

         

この宣言をシオニスト連盟に伝えていただければ感謝します。

         

誠意をもって、アーサー・ジェームス・バルフォア

 この決して長くはない手紙が、いわゆるバルフォア宣言というものでした。

 原文は非常に巧みな表現で、解釈の余地を色々と残しているようです。さすが、老練な外交戦術、というものかもしれませんが、その時々の戦争遂行上の理由で、それ以前の様々な約束との整合性も無視して強行されたものです

 当時オスマントルコ帝国は衰退の一途を辿っていたところに、第1次世界大戦ではドイツ側について戦っていました。

 そうした中で、トルコ支配下のアラブ東方地域に関する連合国の取り決めが色々なされるわけです。

 フサイン-マクマホン協定とは、メッカのシャリフ、フサインとエジプト駐在イギリス高等弁務官マクマホンとの間でかわされた5回にわたる往復書簡のなかで、シリアの西部を除いたアラブ人居住のオスマン帝国領に、大戦終了後、独立国家を建設することを支持する約束を与えたものです。

 サイクスーピコ協定とは、イギリス、フランス、ロシア間で、戦後のオスマン・トルコ帝国領の分割を約束したもので、その名称は、主に携わったイギリスとフランスの外交官の名前からとられています。

 そしてこの2つとも、帝国主義国家間で結ばれた秘密条約でした。他にも、覚え書きに対する回答の形で、「アラブ自身の行動によりトルコ支配から開放される地域」を含めてアラブの主権下の完全独立を認めることを明らかにしたものがあります。

 なんだか、勝手に他国の領土に線引きをしてしまうのですから、これだけでもやりきれません。それも、秘密裏にこそっと。

 サイクスーピコ協定での領土分割は以下の図をごらんください。現在のイスラエル領の多くは、この協定でエルサレムを含めて国際管理下に置かれています。ただし、その中でハイファとアッカはイギリスの直轄地です。

       Photo_33    ちなみにアッカはかの十字軍の根拠地で、要塞がありました。こんなところにも、ヨーロッパとアラブ社会の確執がうかがえますね。

 そしてこの秘密条約から、革命の勃発したロシアは離脱し、その存在と内容は革命政府によって「イズヴェスチア」紙上で暴露されます。

 イギリスでも、17年11月には「マンチェスター-ガーディアン」誌に掲載され、その内容がフサイン側に知らされるだけでなく、アラブ地域全般に広がっていくことになります。

 そして第1次大戦後のイギリスとフランスの勢力は、次の図の通りです。           Photo_36         

イギリス、フランスという帝国主義勢力の、アラブ・イスラエル双方への見事なまでの裏切りがわかりますね。

 そしてシオニズム運動というものは、始まったときから、こうした大国の権力支配の道具として使われて、イギリス・フランスがアメリカに取って代わられただけでその構図はちっとも変わらないのではないか? という疑問が湧いてきます。

 おしりもアメリカ、ライス国務長官の、新しい中東の「産みの苦しみ」発言がありました。

 ここまで冷徹に計算できる人間って、ある意味「怪物」というよりも、「妖怪」どころか、それこそ「悪の帝国」。もしかしたら、手持ちの武器がなくなるまでこの戦闘を止めさせる気はないのでしょうか。

 (第1次大戦後のアラブ民族運動については、明日に書きます。今日はここまで)。

 

 

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コメント

嫌なニュースですが、イスラエル政府がレバノン南部の地下深くに点在するヒズボラの堅固な要塞(司令部やミサイル基地など)攻撃のため、米政府に精密誘導爆弾の早期提供を要請したことが報じられています(N.Y.Times、2006.7.22)。

ここで想起されるのは、既にアメリカがイラク開戦にあたり核兵器戦術を伝統的な広域殲滅型からピンポイントによる拠点叩き型へ変更していたという現実があることです。それはバンカーバスター(地下貫徹型爆弾)などの精密誘導爆弾に小型核爆弾頭などの高性能爆弾を搭載して攻撃することを意味します。これは間違いなく、中東の一部を被爆させ、周辺へ放射能汚染を拡げることになります。

もし、この戦術がイスラエルによる今回のアメリカのための“代理戦争”で実行されることになれば、世界で唯一の核爆弾による被爆国であり、それ故に「平和憲法」を掲げる日本の小泉首相が、サンクトペテルブルグ・サミット直前の中東訪問でキッバを被り「イスラエルの嘆きの壁」を訪れたことの責任が厳しく問われなければなりません。

投稿: toxandoria | 2006年7月23日 (日) 18時06分

toxandoria さん,こんにちは。本日付の Al-jazeela によると,「小型核爆弾頭などの高性能爆弾」はどうも湾岸戦争で使われたDU弾 (Depleted Uranium bomb)らしいとの情報が入ってきました。何を考えているんだ,と思いますよ。自国の兵士さえ危険に晒す兵器を平気で使う,その神経が理解不能です。サミットはもう事実上,崩壊したと考えるのが妥当かも知れません。

投稿: kaetzchen | 2006年7月23日 (日) 20時17分


WHAT NHK NEVER SHOWS YOU.

http://fromisraeltolebanon.info/

投稿: 弥助 | 2006年7月23日 (日) 21時52分

toxandoriaさん、kaetzchenさん、こんばんわ。
 なんだか、もう、言葉もありません。
 アルジャジーラにいわれていたというDU弾って、劣化ウラン弾のことですか。ふー。
 
 ところで、なにか色々偉そうに、人を馬鹿にしたような調子で反論していたページがありました。一連のこういう人たちって、どうしてこんなに人を嘲るようないい方をするのでしょうかね。
 で、これって、どうなんでしょうか。
http://72.14.203.104/search?q=cache:sGwh03uQ5kwJ:members.jcom.home.ne.jp/
3720652101/uranium.htm+%E5%8A%A3%E5%8C%96%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%
B3%E5%BC%BE&hl=ja&gl=jp&ct=clnk&cd=4&lr=lang_ja&client=firefox

投稿: とむ丸 | 2006年7月23日 (日) 22時45分

弥助さん、こんばんわ。

いきなり、きついです。これが現実なんでしょうけど。

ひと言、言葉を添えていただきたかったです。

投稿: とむ丸 | 2006年7月23日 (日) 22時51分

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