世襲デモクラシー
ヒメヒオウギ。可憐な花ですが、繁殖力旺盛。球根がどんどん太って、どんどん増えます。
さて、このところアベ晋三官房長官の祝電問題が話題になっていますが、この、故岸信介元首相から3代目の御曹司のみならず、次期首相候補の「麻垣康三」の他の3氏も皆世襲政治家なんですね。
小選挙区制が導入された1996年の衆院選挙以降も、2000年、2003年の選挙で世襲政治家が増え続け、とうとう2003年には衆議院の全議席480のうち135議席が世襲議員という事態になりました。もちろん圧倒的に多いのは自民党で、小選挙区制がそうした傾向を強めたといわれています。
(ただし、どの範囲までを世襲と捉えるか、人により異なるようです。 親族が同じ選挙区にいるか、もしくは選挙区が一部でも重なる場合、当然そのことが有利に働きますから、それを考慮すると、2003年の総選挙での世襲議員は185人というデータもあります。)
昨年の総選挙では公募制もとられ世襲が若干減少したようですが、単なるガス抜きのようにも感じられます。やはり地盤と後援会を受け継ぐ世襲議員は断然有利で、2世のみならず、3世もけっこう多く、4世も大分前から出現しています。
こうなってくると、国会は、貴族院の様相を呈してきているのでは? という懸念が出てきてもおかしくありません。
既成事実を積み上げていくと、そのうち華族制度復活、なんてことになるのでしょうか?
卓越した少数のエリートによる政治というものを、私は信用していません。一人ひとりの持つ力などというものは、トータルでみればそれほど差はないと考えています。
そして何よりも、「絶対権力は絶対的に腐敗する」と思っているからです。
生まれたときから政治家たるを約束されると同時に要求もされ、親から子へ権力が受け継がれる、いわゆる「世襲デモクラシー」。この血の紐帯による政治家という職業と社会的地位の継承は、日本独自のものなのでしょうか。「家」の存在が大きい、他のアジアの国々の事情はどうなのでしょうか。
在仏30年の日本人から昨年聞いたところによると、個人主義に徹するフランスでは、まず考えられないということでした。
私たちの社会では、家を継ぎ、同時に職業を継ぐのは、一種の誇りと共に、それほど抵抗なく受け容れられてきました。幕藩体制の崩壊、第2次世界大戦での敗戦と、その流れが断ち切られる機会はありました。また、高度成長期以降は国民の多くがどんどんサラリーマン化するという波もかぶっています。けれど一部の職業はその波にのまれることもなく、1つの世代から次の世代へと継承されてきました。
とりわけ世襲が有利に働くのが、地盤・看板・鞄をもつ政治家で、この三バンに裏付けされた利権構造は、まるで後援会という家臣団を抱えた封建領主の城のようです。そして、お家断絶は一大事ですから、中には涙ぐましい努力をされている方々もいらっしゃるでしょうね。
でも、お家のことのみならず、私たち領民のことも考えてくださる、水戸黄門のごとき奇篤な方もいらっしゃるかもしれません。これが「日本型デモクラシー」というものだと、どこかで刷り込まれているような気がします。
お家のことしか眼中にない方々の中にあって、これは喜ばしく感謝すべきものだと、有言無言のうちに教え込まれてきたような気がします。
明治初期にせっかく芽生えてきた民主主義の芽をつまれ、脅され監視されてきた65年間の影は、一党独裁の下、戦後60年経ってもなお、完全には消えていません。
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コメント
昔から会社や商売は3代目がつぶすと聞いていました。国は大丈夫かしら?
投稿: ヘリオトロープの小部屋 | 2006年6月27日 (火) 11時19分
今朝から騒いでいる,セレブ女医の娘の誘拐事件も何となく似ているような気がしてなりません。あれって,公共の電波を使った宣伝にしか思えないのですけれど。つまり,犯人グループはカネで雇われた「やらせ」だった,なんてね。
# 金持ちなんて殺されようと誘拐されようと私には関係ないですけど……。(^^;)ビル・ゲイツみたいに資産を寄付するなんて,日本の成金は考えないからなー。澁澤栄一はどこへ行った。
江戸幕府は水戸黄門のような優秀なアドバイザーがいたから体制を維持できたのかも知れませんね。
投稿: kaetzchen | 2006年6月27日 (火) 15時20分
ヘリオトロープさん、
昔から、江戸幕府270年は、3代目の家光のお陰だ、なんていいますよね。3代目を試しにあげてみますと、以下の方々。
小渕優子、逢沢一郎、愛知治郎、麻生太郎、池坊保子、伊藤公介、小此木八郎、金子恭之、川崎二郎、岸田文雄、木村太郎、玄葉光一郎(民主党)、小泉純一郎、河野太郎、後藤田正純、小宮山泰子(民主党)、近藤洋介(民主党)、佐藤勉、七条明、谷公一、田村憲久、土屋品子、寺田学(民主党)、中山泰秀、葉梨康弘、平井卓也、二田孝治、船田元、堀内光雄、三林隆志、宮澤洋一、森英介、山口泰明、
4代目は、
小坂憲次、古屋圭司、鳩山邦夫、鳩山由紀夫、武藤容治、なお、船田元は4代目という説もあります(元田肇─船田中・船田享二・藤枝泉介─船田譲─船田元)。親族関係をどこまで辿るかで違ってきますね。
(政党名のない場合は自民党です)
kaetzchenさん、
朝から妙なニュースでしたね。
それと、水戸黄門の実像は、史実とは大分違うようですよ。
投稿: とむ丸 | 2006年6月27日 (火) 19時26分
世襲議員のリストによってもれがあります。
3世議員で大事な人を忘れていました。チーム世耕で有名な世耕弘成氏です。他にもまだいそうです。
投稿: とむ丸 | 2006年6月27日 (火) 23時33分
このリストはどこから調べたのですか?二代目のリストも見たいな、なんて...。
三林隆志は三ツ林隆志ですね。しょうもないツッコミですみません。m(__)m
ある意味で有権者をマインドコントロールする役割の世耕氏が三世とは知りませんでした。(恐ろしや)
投稿: 村野瀬玲奈 | 2006年6月28日 (水) 00時42分
あ、リストに又もれがありましたね。
4世議員の鳩山由紀夫氏は民主党です。
村野瀬さん、
2世議員多すぎて……今度出しましょうか。でも、調べたサイトによって若干違いがあるので、かなり手を焼き、まだ不十分です。
投稿: とむ丸 | 2006年6月28日 (水) 01時02分