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定足数削除――自民憲法草案6

 さて、自民党は、国会をどのようなものにしていこうと考えているのでしょうか。その草案を見ていきます。


(国務大臣の議院出席の権利及び義務)


第五十六条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議院の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。


2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない


 これについては現行憲法では次のようになっています。


第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない


 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。


 つまり現行憲法では総議員の3分の1以上の出席がないと「議事を開」くことができませんから、当然「議決する」こともできません。


 ところが自民の草案では、総議員の3分の1以上の出席がないと「議決することができない」ということしか言われてませんから、3分の1の定足数に満たずとも、何人であれ出席者があれば議事を行うことはできます


 おまけにこの56条は、現行憲法と自民草案では構成が逆になって、現行憲法では第2項の条文が、自民草案では第1項になっています。なぜわざわざ、そうした処理をしなければならなかったのか、気になります。


 もともとこの草案が発表される前年の2004年の「憲法改正プロジェクトチーム『論点整理』」ではこの問題に関して、「議事の定足数(現憲法56条第1項)は、削除すべきである」とされています。

  定足数の定足数の規定を外して、出席議員の過半数で表決できるようにするのが本来狙いでしょう。

草案では規定は削除されましたが、議決には総議員の3分の1以上の出席が必要であるということは残されました。いずれ、その規定も外されることになるのでしょうか。


 そこまでしなくても、定足数の規定がなくなって議事が行われることになれば、無風状態のまま議事は進行。実質的な審議はないも同然の事態も予想されます。


 ここまで考えるとは、一体どんな人たちだ、と怒りを覚えます。


 ちなみに、自民党「新憲法起草委員会委員」は、昨年10月28日の時点で以下の人たちです。


委員長 森喜朗


事務総長 与謝野馨  副事務総長 中曽根弘文


事務局長 保岡興治  事務局次長 桝添要一


委員


〈国会議員〉


安部晋三  愛知和男  石破茂  伊藤信太郎  岩屋毅  衛藤征士郎 大島理森  大竹秀章  海部俊樹  加藤紘一  加藤勝信  金子一義  瓦力  高村正彦 古賀誠  近藤基彦  坂本剛二  笹川堯     鈴木恒夫  園田博之  谷川弥一  玉澤徳一郎  津島雄二     渡海紀三朗 中曽根康弘  中谷元  中山太郎  西川京子      額賀福志郎  野田毅  橋本龍太郎  鳩山邦夫  葉梨康宏     原田義昭  平井たくや  福田康夫  船田元  宮澤喜一  宮澤洋一  森山真弓  谷津義男  


愛知治郎 淺野勝人  阿倍正俊  荒井正吾  泉信也  市川一朗   岩城光英  岡田直樹  岡田広  小野清子  金田勝年 狩野安   沓掛哲男  倉田寛之  後藤博子  鴻池祥肇  坂本由紀子     山東昭子  椎名一保  清水嘉与子  陣内孝雄 関谷勝嗣  世耕弘成  武見敬三  中川雅治  林芳正  藤野公孝  松田岩夫  松村龍二  溝手顕正  山下英利  若林正俊


〈ブロック選出〉


清水誠一(北海道)  高橋定敏(北海道)  北林康司(秋田県)    今井榮喜(山形県)  山口武平(茨城県)  梶克之(栃木県)     宇野裕(千葉県)  古沢時衛(神奈川県)  佐藤裕彦(東京都)    大西英男(東京都)  上田信夫(富山県)  木村市助(福井県)     猫田孝(岐阜県)  多家一彦(静岡県)  国枝克一郎(京都府)     酒井豊(大阪府)  淺野俊雄(島根県)  宇田伸(広島県)      綾田福雄(香川県)  清家俊蔵(愛媛県)  中村昭彦(福岡県)    島津勇典(熊本県) 


参与  葉梨信行 

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