植木枝盛の憲法草案3
現行憲法に謳う「裁判を受ける権利」、「逮捕に対する保障」、「抑留拘禁に対する保障」、「住居侵入・捜索・押収に対する保障」、「拷問及び残虐な刑罰の禁止」に該当するものは、国憲案では第45・46・47・48・57・61条でしょう。
「日本人民は何らの罪ありといえども、生命を奪われざるべし」(第45条)
「日本の人民は法律の外において何らの刑罰をも科せられざるべし。また法律の外において麹治せられ逮捕せられ拘留せられ禁錮せられ喚問せらるることなし」(第46条)
「日本人民は身体汚辱の刑を再びせらるることなし」(第47条)
「日本人民は、拷問を加えらるることなし」(第48条)
「日本人民は住居を犯されざるの権を有す」(第57条)
「日本人民は法律の正序によらずして室内を探検せられ器物を開視せらるることなし」(第61条)
これに対して明治憲法は次のように定めています。
第二十三条 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ
第二十四条 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルゝコトナシ
第二十五条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索サルヽコトナシ
一応、「裁判を受ける権利」、「逮捕に対する保障」「抑留拘禁に対する保障」、「住居侵入・捜索に対する保障」は述べられていますね。しかし第25条では、「法律に定めたる場合を除くほか」と、但し書きが付いています。
「拷問及び残虐な刑罰の禁止」については何もいってません。
現行憲法の「刑事被告人の権利」「証人審問権」「弁護人依頼権」にあたるものは、国憲案の第74条
「日本人民は法廷に喚問せらるる時に当たり、詞訴の起こる原由を聴くを得、己を訴うる本人と対決するを得、己を助くる証拠人及び表白するの人を得るの権利あり」でしょう。
明治憲法にこの種の規定はありません。
その他、国憲案第62条にあった「信書の秘密の保障」について明治憲法では、
第二十六条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ祕密ヲ侵サルゝコトナシ
とあり、「法律の定めたる場合を除くほか」と、やはり但し書きが付いています。人権に関してこれだけ但し書きが付くというのは、かなり姑息な手段だ、と思いますが、法律の専門家はどう見るのでしょうか。
なお、現行憲法に定める「財産権の保障・正当補償」について国憲案では、
「日本人民は、諸財産を自由にするの権あり」(第65条)
「日本人民は、何らの罪ありといえどもその私有を没収せらるることなし」(第66条)
「日本人民は、正当の報償なくして所有を公用とせらることなし」(第67条)
明治憲法では
第二十七条
1 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルゝコトナシ
2 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
となっています。現行憲法でも、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」(第29条 第3項)とあります。
明治憲法にいう「公益のため必要なる処分」とはどんなことが想定されていたのでしょう。また、実際にどのような場面で適用されていたのでしょうか、興味のある所です。
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