格差社会の先進地イギリス――ABC1とC2DE、あなたはどっち?
3,4年前イギリスに遊びに行ったとき、まさに古典的な乞食を2度見てびっくりしました。両方とも繁華街の地下鉄駅を出た歩道に座っていて、1組は若い男性ひとりで、あとの1組は若い男女のペアでした。コートを着る季節でしたから、寒いでしょうに。
男性ひとりの方は、首から大きな段ボール板に「I'm hungry」と書いて、首からぶら下げていました。ペアの方は座り込む目の前に、お金を入れる容器を置いていました。
そしてこれよりショックで、今でも脳裏に焼き付いているのが、リージェント公園の植木の茂みに隠れるように座っていた、黒いコートを着ていた男性です。
ウィークデーのお昼頃のことです。友人と散歩を楽しみながら歓声を上げてその場に飛び込んだ私の目に飛び込んできたのは、左手にビスケットの菓子パックを持って食べていたところで私の声に驚き、こちらを向いた顔でした。いかにも「ギクッ」とした様子がうかがわれ、当惑の色を浮かべていました。「失業中でお金がなく、ビスケットでお腹を満たしている」と、とっさに私は感じ取ったのですが。
当時イギリスは、不況に喘ぐ日本とは異なり、好況という話でした。ヒースローからロンドン中心部へ向かうバスから見えた沿道の建物には「let(貸家・貸間)」の貼り紙がよく見られ、工事中の立て看があちらこちらにありました(もっとも日本ほどではありません)。トラファルガー広場付近も大きな工事の真っ最中。
そして、前回行ったときよりずっと目立っていたのが中国系。日本人かな、と思うと、聞こえてくる言葉は中国語ばかり……。
世界の縮図を目の当たりにして、今度当惑したのは、私の方でした。
日本でも何かと揶揄されることの多い政治家ですが、イギリスでも色々ありますね。一般向けのユーモア本でも、いわゆる新経済政策を貫いたサッチャリズムへの痛烈な批判を、笑わせる小咄に仕立てたりしています。
さらにびっくりするのが、社会階層あるいは社会的階級が確固として存在することを認めていること。個々人のアイデンティティの1つとして、その人の背景を説明するのに、出身階層に関する記述が、色々な場面でなされているわけです。
最近、台所に立ちながら、NHKテレビで格差社会の問題を取り上げているのを再三耳にしました。
格差社会の先駆者であるイギリスをちょっと見てみましょう。
上流階級は雲の上人で別でしょうが、社会的なランク付けとして、ABC1・C2DEというものがあって、それぞれ個人を紹介するのに使われているのを見たときは、驚きました。カルチャーショックです。
ちなみにそれぞれの文字は何を意味するかというと、
A:上位中流(いわゆるお金持ち。長者番付にはいるような人も、英国国教会の指導者たちもここ。全人口の3.4%)
B:中位中流(銀行頭取、医師や軍人など。全人口の21.6%)
C1:下位中流(銀行員、お坊さん、学生、農園所有者など。全人口の29.1%)
C2:上位下流(熟練工、農園の雇われ人など。全人口の21%)
D:中位下流(非熟練工、郵便配達員、漁師さんなど。全人口の16.2%)
E:下位下流(生活保護世帯、年金生活者など。全人口の8.8%)
さて、我が家はどうなるのでしょうか。夫は時々、堅実な仕事へ出かけていきますが、すでにリタイアしていて、おまけに年金もまだ貰っていませんから、Eにも入りません。辛うじてどこかに入れようというのであれば、さしずめE2下位下位下流といったところでしょうか。いや、一応自力で生活していて、保護受けていませんから、E1上位下位下流といったところでしょうか。
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