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植木枝盛の憲法草案2

 植木枝盛の憲法草案「日本国国憲案」の第49~56条にかけての8ヵ条、第58・59・60・63・65条の5ヵ条は、それぞれ思想の自由、信教の自由、言語表現の自由、議論の自由、出版の自由、集会の自由、結社の自由、歩行の自由、住居・旅行の自由、学問の自由、産業の自由、国籍離脱の自由、財産の自由を定めています。第62条には「通信の秘密」も規定しています。

 幕藩体制の下で、志高く国の将来を憂う人々が処罰され、獄門に下ったことへの反省が、よくみられるではありませんか! 

『海国兵談』を著して版木没収、蟄居の憂き目にあった林子平が、「親もなく妻なし子なし版木なし、金も無ければ死にたくもなし」と自嘲気味に歌い「六無斉」と称したのは、19世紀直前のこと。そして幕末の動乱期、これらの自由権が否定されていたことで、有名無名含めて、どれだけ多くの人々の血が流されたでしょうか。

 第45条の「何らの罪ありといえども、生命を奪われざるべし」というのは、「死刑廃止」を意味するのでしょうか。

 そしてすごいのは、第64条の「無法に抵抗することを得」という抵抗権の規定と、第70~72条の規定です。

 前者は、「国家権力の不当な行使に対して抵抗する国民の権利」を保証していること。後者は「革命」をも容認していること。

「政府国憲に違背するときは日本人民は之に従わざることを得」(第70条)、
「政府官吏圧政を為すときは、日本人民は之を排斥するを得。政府威力を以てほしいままに暴虐を逞しくするときは、日本人民は兵器を以て之に抗することを得」」(第71条)

「政府ほしいままに国憲に背きほしいままに人民の自由権利を残害し建国の旨趣を妨ぐるときは、日本国民は之を覆滅して新政府を建設することを得」(第72条)

 少々笑ってしまったのが、第73条「日本の人民は兵士の宿泊を拒絶するを得」です。何か唐突に出てきた感のあるこの項目が、当時の世相を背景にしているのは間違いないでしょう。知り合いのさる識者(ただしこの分野の専門家ではありません)はこう説明してくれました。

「確かな根拠を私もいまのところ持ち得ませんが、この「草案」が明治14年に発表されているということから、明治の初年から明治10年間で続く、各地での動乱、秋月の乱・萩の乱、そして西南戦争などで、政府軍の各地での戦線拡大に際して、兵士の宿泊施設を強制的に民家に求めたことに対する、人民の権利確保が背景にあるものと考えられます。」

 兵士を宿泊させること自体大変なことでしょうし、その後の戦況の推移によっては宿泊所提供者にどんな災難がふりかかってくるか分かりません。当時の庶民の狼狽がうかがえます。

 

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