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バウト問題の裏にあるもの

 東西冷戦が終わってほっとしたのも束の間、各地で紛争が勃発してきました。私は、ヴィクトー・バウトの足跡を辿ることで、その背景に横たわるものを垣間見ることができました。これにより、ブッシュ親子のとってきた政策がまったく同一の路線上にあることも分かりました。よくいわれるように、これが米国共和党の世界戦略なのでしょう。(パパ・ブッシュが副大統領の時にイラン‐コントラ事件が起きたことはすでに述べましたが、これは、イラン・イラク戦争中のイランへ不法に武器を売却した代金を、ニカラグアの反共ゲリラ援助に秘密裏に流用した事件です。)

 それにしても、ペーター・ランズマンのインタビューに、それまで表に出ることを極力避けてきたヴィクトー・バウトがよく応じたものだと、驚いてしまいます。ランズマンによると、バウトは、熱心にしゃべりながらも、同時にしぶる様子が見えたようです。危険は犯したくないが、それでも伝えておきたいことがある、そんな気持でしょうか。
 
無名の若者が、航空機を調達できるだけの資金を得て、冷戦時代の負の遺産である山と積まれた兵器を紛争地に売りさばく。
「私には出資者はいませんでした」と語るバウトですが、25歳のロシア青年は、事業開始にあたってアントノフ型貨物用機3機を12万ドルで購入し、さらにモスクワからの長距離運航便をリースしています。そんな資金はどうやって手に入れたのか、と尋ねられても、何も答えてくれません。内戦中のモザンビークに勤務していたとき、リクルートされたのかもしれませんね。 
「殺人は武器のせいじゃない。武器を使う人間のせいだ」というバウトの言葉は、もしかしたら本心から出たものではないのかもしれません。表向き、そうとでも強弁せざるをえない立場だったのででしょうか。自分にそう言いきかせて、なんとか良心と折り合いをつけていたのでしょうか。一度踏み入れたら抜け出すことのできない世界でしょうから。

 菜食主義者。北極圏に行って、ナショナル・ジオグラフィックとディスカバリー・チャンネル用の野生動物の映画を作りたい……と語る人間と武器商人との落差に、ランズマンは驚きの声をあげます。

 田中宇さんの記事によると、最も内戦に陥りやすい国は、石油や金などの地下資源の輸出が国の経済を支えていて、しかも極貧状態にある2民族国家だそうです。

 内部の対立・抗争を煽り、紛争を激化させる→需要を作り出して、商品である武器を売却する。紛争はさらにエスカレートする

 19世紀の帝国主義と、どこが違うというのでしょうか! 主役が、大英帝国からアメリカ合衆国に変わっただけではないでしょうか。

 小泉首相は、就任以来ブッシュ大統領との密月を演じてきました。彼に引っ張られて、とうとう私たちの国はイラクに派兵し、憲法を改正して、正々堂々と軍隊を持てる国にしよう、という瀬戸際までやってきてしまいました。
 
「日本国憲法は押しつけ憲法だ」という神話を作り上げた人たちは、さぞにんまりしていることでしょうね。そうした人たち、そしてこの神話を奉じる人たちは、やっぱりこのまま米国の世界戦略に乗っかっていく構想を支持しているのでしょうか。

 科学技術の粋を集めて造り上げる兵器を途上国の紛争地に投入することで自らの経済を潤す。これは形を変えたジェノサイドです。現在の憲法のおかげで、そんなジェノサイドに荷担せずにすんできたことを、私たちはもっと誇りにしていいのではないでしょうか。 

 敗戦後に生まれた「神話」といえば、私の脳裏に浮かぶのは第一次世界大戦後のドイツに生まれた「匕首神話」です。次回は、この「匕首神話」について、お話しします。 

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